SAILORプロフィットマイカルタ ― 2014/06/22
万年筆は実用重視とファッション重視に分かれます。
黒ベースに金か銀のモデルはどちらかというと実用向けのものが多いです。例外としてモンブランのように黒・金系でブランド志向のものもありますが、所詮樹脂ボディーなので実用向けといってもいいと思います。イタリア系のものたとえばアウロラなどはカラフルなボディでファッショ性を感じます。
今回、カランダッシュというスイス製のレマン・コレクションという万年筆を試し書きしたくて銀座の伊藤屋に行きました。店舗の細字を全て書かせてもらったのですが、細字でありながら太字~細字までのバラツキがあり個体差のひどさに驚きました。その中の細字といえるものでもインクフローが途切れたり、引っ掛かったり、と書き味はひどく使用に耐えるものではなく今回は購入を断念しました。
その日、セーラーのペンクリニックイベントがあり、有名な長原幸夫ペンドクターが対面調整してくれるとのことでちょっと覗いて見ました。そこで、セーラーの人にずっしりと思い万年筆ありませんかと聞いてみたらドでかいペンをいろいろ見せてくれて、その中の1品が結構書き味がよかった。せっかくの機会なので長原氏に調整してもらい購入することにしました。
それが、プロフィットマイカルタという製品です。「マイカルタ」は、綿布とフェノール系樹脂を高圧で固めた素材で、<耐久性><耐熱性><吸湿性>に優れた、実用性の高い樹脂素材で、革のような感触が手に馴染み、使い込むほどに色の経年変化を楽しむことができすそうです。実際に触ると皮をまいたような質感です。

ペン先の滑りは抜群で問題なかったのですが、せっかく名人がおられるので細かく調整してもらいました。
1)ペン先の背でも極細で書けるように。
2)左下から右上に行くときのかすかな引っ掛かりを取る。
3)インク量の調整。
4)その他いろいろ
些細な不快感もみな何とかしてくれました。じっくりと書き込んで確認できるほどの時間はなかったので、とにかく調整してほしい点が出てきたらペンクリニックに来れば何時でもやってくれるというお墨付きをもらったので安心しました。
最後に長原幸夫調整済みスタンプを押した紙箱に入れ合皮のペンケースとコンバーターをサービスしてくれました。数万円する商品の化粧箱にしては紙?と思いましたがいいことにしました。合皮のペンケースは黒と赤がありましたが目立つ赤にしました。

これが伊東屋最後の1本だそうです。
持ち帰っていろんな紙質のノートに書いてみましたが、やはり静かな小さな部屋でじっくり書くと紙面を走るときに音や抵抗が微妙に指に伝わってきて店での感覚とはずいぶん違っていました。本格的に調整しようとすればもっと時間がかかりますから他のお客さんのことも考えると仕方がないと思います。
でも、
しばらく我慢して書いていましたがだんだんと我慢が出来なくなってきました。ペンクリニックに依頼するにしても常に開催されている訳ではなく、郵送では微妙な感覚が伝わらない。結局自分で少し補正することにした。
【余談】
万年筆は書きながら時間をかけて育てていくものだとよく言われますが、僕は賛成しません。新品は最高の状態であるべきだと思っているからです。自動車レースに例えればレース本番に最高の仕上りのマシンを投入すべきで、なじませる必要があるならレース前の準備や整備のときに終えておくべきです。万年筆も使いながらなじませるという考えにはどうも賛同できません。僕は最高の状態の万年筆をパートナーとしてともに劣化と老化していきたいと思います。
【追加改造編】
結局、書き味が満足できず禁断の改造をすることにしました。SAILOR万年筆の長刀研ぎもペン先を持つ同系統の万年筆を購入しペン先を入れ替えました。これで世界に一つの長刀研ぎマイカルタができました。さらに長刀の反り角度を強くし毛筆のように書けるように改造しました。その結果、力加減で細字から中字と筆のように書け、また、逆さ書きにすると極細で滑らかに書けるようにしました。逆さが気の極細は手帳などに書くときに重宝します。僕の万年筆はどれも逆さ書きで切るようにしてあります。